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2017-08-28

空の灯音楽隊LIVE Vol.2のこと。


ファーストアルバム「水景」(2006)と最新アルバム「空の灯」(2017)

「癒し」という言葉では語りきれない。
   そこには相反する世界が常にある。

静岡に丸山研二郎というギターリストがいる。彼と出会ったのは、彼が静岡大学を卒業する間際だからもうすでに10年を超えただろうか。静岡大学で彫刻を学んでいた彼が、卒業制作で発表したのは自作の楽器群だった。ウードのような古楽器に似たものなど、10点ほど並んでいた記憶がある。さらにその楽器を使って作曲も行った。知人の学生を目当てに見学に訪れた卒業制作展の館内で聴こえてきたのが、これらの曲だった。どこか郷愁を誘うインスト曲が心地よく耳に響いたことを今でもよく覚えている。

才能という言葉を使うのは大袈裟かもしれないが、彼はそれに資するものを持っていることに疑いはなかった。その時からすでに独自性があり、一貫性があった。つまり学生ながらにアーティストとしてすでに存在していたのだ。その可能性に大いなる期待を寄せた。そうしてスノドカフェとの関係も始まった。2006年にスノドカフェがオープンし、初めて企画したイベントが彼のライブだった。映像作家とのコラボという今でこそ珍しくないパフォーマンスだが、そのクオリティに気持ちが高ぶったことも昨日のように覚えている。そのあとも節目節目に登場してもらっているが、彼は肥沃な土地のごとくあらゆるものを吸収し、育てていることが見て取れた。

それから月日が経ったが、静岡の音楽界では独特の存在感を放っているようだ。同業者は彼のソングライティングの能力にとくに敬意を払っているように感じる。過去に感じた唯一性(uniqueness)は経験を積むことによって更に深まっていることは間違い無いだろう。これまでリリースしたCDはジャケットを見なくても聴けばすぐに彼が創作したことが分かる。心地よいメロディー、リズムは雑木林を進むように奥行きを増し、さらに洗練されたハモーニーが朝霧のような潤いと共に広がる楽曲は彼そのものだ。

ゆえに彼の音楽を言葉で説明するのは難しい。ロック、ジャズ、ブルース、ポップス、ワールドミュージック、民謡、唱歌など影響されている音楽のレンジは広い。それと重要なのがお経であろう。実は彼はお寺の次男である。生まれた時からお経に慣れ親しんでいる。この影響は決して少なくないと私は見ている。彼の音楽の特徴であるリフレインは彼の出自と無関係ではないだろう。

そんな彼の能力に魅力を感じて集まった音楽仲間と一緒に制作したのがニューアルバム『空の灯』だ。このアルバムの特徴はそれぞれがソロ、あるいはグループで活動している地元のミュージシャンたちが集まっていること。和楽器奏者なども含む14人のメンバーによって編まれた「空の灯音楽隊」。今回のライブはそのうちの9人によって行われる。メインボーカルとコーラスで6人というのはローカルのバンドスタイルでは珍しい編成であろう。このアルバムの特徴はライブでも同様に聴きどころとなる。

彼と仲間の生み出す壮大な物語は「癒し」という一言では語れない。確かに彼の音楽はそのように表現されることは多い。しかし、もちろん、それだけではない。彼の音楽世界はユートピアを指向しているのではなく、表裏がぴったりと密着したリアルな現代ではなかろうか。光があれば影ができるように、現世が前世と来世の三世でひとつなように、あるいは彼岸と此岸という二世界があるように、彼は相反する世界そのものを常に表現してきたように感じる。私はたおやかなリズム、ハーモニーの中に潜むアグレッシブさに惹かれてきた。それこそが彼を特徴付けてきたのではなかろうか。モダン、アーバン、コンテンポラリーという形容が時としてしっくりくる。それらが「癒し」をさらに照らすというのが私の丸山研二郎感である。

9月17日に行われる丸山研二郎 + 空の灯音楽隊ライブ VOL.2は、その音楽性をたっぷり届けるべく、9人の経験豊富なミュージシャンで挑む。豊かなで複雑でそれでいてシンプルな時間を届けられるのだと思う。今回は特別ゲストとしてSPAC-静岡県舞台芸術センター俳優である布施安寿香さんが朗読で参加される。布施さんは先日大成功を収めたフランス・アビニョンで行われた世界三大演劇祭のひとつ「アヴィニョン演劇祭」のオープンングアクト「アンティゴネ」で2,000人の前で演技するほどのプロ中のプロ。彼女の参加によりこの物語はさらに色彩が増すだろう。とても楽しみである。

もう10年、まだ10年。彼の成長を見ている者として、こうした新たなスタイルに挑むライブ開催を手伝いできることは幸せだ。お互いに続けられてきたからこそ分かる事がある。彼のパフォーマンスを十全に引き出せるように努めたい。シンガーソングライター丸山研二郎を知る人も知らない人も、ぜひ注目してほしい今回のライブである。そして普段聴くことができないミュージシャンたちの競演によって、改めて静岡のポテンシャルの高さも感じて頂ければ嬉しく思う。


[ ライブ情報 ]

空の灯音楽隊LIVE Vol.2
出演 丸山研二郎と空の灯音楽隊、布施安寿香(SPAC)
日時:2017年9月17日(日) 開場15:00/開演16:00(終演18:00予定)
会場:静岡市民文化会館B展示室
料金:¥2,800- (1drink付)

more info → 空の灯音楽隊LIVE Vol.2

【メンバー】
丸山研二郎 G.Vo.
加瀬澤彩友美 Vo.
しほみ Vo.
てづかあい Vo.
misato Vo.
黒川浩和 Vo.
渡辺真由子 Key.
中司和芳 Ba.
原口朋丈 和太鼓.篠笛

布施安寿香 朗読

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